この度、第112回日本医学物理学会学術大会を2016年9月8日(木)~10日(土)に沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて開催させて頂くこととなりました。沖縄の地で医学物理学会学術大会を開催させて頂くのは身に余る光栄であり、沖縄県内の医学物理関係者にとっても大変な喜びであります。日本医学物理学会学術大会の沖縄開催は2回目であり、1回目は1990年9月(第60回大会)に開催されました。その時より20年以上が経ち、社会環境と同様に医学物理を取り巻く環境も大きく変化しています。情報・通信分野を筆頭とした各種分野の発展と共に医学物理分野の進歩も目覚ましいものがあります。これまでの医学物理分野は新技術の開発・発展が大きな関心事でしたが、近年は安全面も重要視されつつあります.近年の技術革新は著しく、多様な機器に自動処理・判断機能も装備され、一昔前のように職人技的な経験や知識がなくても比較的容易に業務を遂行できるようになりました。表面的な操作の簡便化とは逆に、機器内部での処理は複雑化し操作者側からはブラックボックスとなっているのがほとんどです。技術革新による利便性向上の裏側には予測できる或いは予測しがたい危険性が内在しているのも事実です。医学物理の関与する医療分野においても、各種医療機器の機能や操作性は向上していますが、反面、ブラックボックス化しているのも否定できません。また、放射線治療や撮影などの作業手順も複雑化しており、機器内部のブラックボックス化と併せて予測しがたい危険性が内在していると考えられます。
辞書(広辞苑、第六版)によると、安全は「安らかで危険のないこと」、「物事が損傷したり、危害を受けたりするおれのないこと」と説明されており、一般的に連想されると安全の意味と合致します。一方、ISO/IEC Guide 51:2014 (Safety aspects — Guidelines for their inclusion in standards)によると、安全は「許容できない危険性がないこと( freedom from risk which is not tolerable)」と定義されています。言い換えれば、「許容できる危険性が存在する状態」と解釈できます。
本大会では医療安全を大会テーマとし、医療安全に関する企画を用意しました。シンポジウムとして、放射線治療、診断、核医学分野での安全対策を開催します。近年は、多くの施設でインシデント報告システムが整備されていますので、多数の施設からインシデント報告の解析関連の研究発表を期待します。医学物理が関与する領域は多様であり、安全対策も多様であると思いますが、本大会が医療安全に関心をいだくきっかけになれば幸いです。
初秋とはいえ、9月の沖縄は残暑が厳しい時期であり、海水浴は十分可能な季節です。沖縄コンベンションセンターには海水浴場が併設されており、10月末まで提供していますので、学会終了後には海水浴等のマリンスポーツを十分堪能できます。
末筆ながら、本大会へ多くの方々がご参加いただき、有益な大会となることを心より願っております。
琉球大学医学部放射線診断学講座
第112回日本医学物理学会学術大会
大会長 垣花 泰政