ごあいさつ
一般社団法人日本医学物理学会
会長 齋藤秀敏
日本医学物理学会は、医学における物理学、工学、情報科学およびこれらに関連ある研究の連絡提携および促進を図り、もって学術の発展に寄与することを目的として設立された学術団体です。
医学物理学という分野は、1895年のレントゲンによるエックス線、1896年のベクレルによるウラン、1898年のキュリー夫妻によるラジウムなど放射性同位元素の発見とその医学応用を起源としています。日本においても放射線の発見から間もなくから医学応用に関する物理工学的研究が行われ、1961年に日本医学放射線学会に物理専門部会が設立されたことで組織的な研究活動が始まりました。当時スタートさせた放射線治療線量の標準化のための吸収線量計測の標準プロトコルの発行、医療用線量標準センターとの学術的連携などは現在も継続している学会事業です。
一方、国際医学物理機構(IOMP)への加盟を目的として旧日本医学物理学会が設立され、1980年には22番目のIOMP加盟国となりました。また、1991年には日本ME学会(現在の日本生体医工学会)との協力で、国際医学物理学術大会(ICMP)および国際医用生体工学学術大会(ICMBE)を京都で開催しました。
以上の変遷を経て、2000年には日本医学放射線学会からの独立と旧医学物理学会との統合により、現在の医学物理学会が設立されました。
当学会は学術研究活動のみならず医学物理士認定制度にも関わっています。その認定制度は1987年の日本医学放射線学会での制定に始まりますが、現在は当学会、日本医学放射線学会そして日本放射線腫瘍学会が共同で設立した一般財団法人医学物理士認定機構が運営しています。機構により認定された19大学院、26コースの医学物理教育コース修了者を含め、医学物理士認定試験受験者は毎年約350名程度を数え、2016年中には医学物理士登録者数が1000名を超えると予想されています。これらの課程で医学物理学を専門とする教育者、学生、そして課程を修了された研究者、実践者が増加し、ますますの学術的発展が期待されています。
以上の経緯を背景に、医学物理学領域の広がりと医学物理学に対する関心の高まりから、2016年2月末現在、正会員2218名、学生会員124名を有する学会となりました。当学会は医学物理学分野の学術発展を図るだけでなく、他の学術分野との連携、国際連携を進めるなど新たな事業を展開し、医療のさらなる向上で社会に貢献していきます。